妊娠16週を過ぎると、器官形成が終了しているため、一部の例外的薬剤(完成した胎児の器官を破壊する可能性がある薬剤)以外に薬剤による奇形はほとんどみられなくなります。しかし、妊娠16週以降から出産までは、胎児毒性に注意が必要となってきます。
胎児毒性とは、胎児の発育障害、臓器機能悪化、死亡のほか、出生後の児の発育など、母体に投与された薬剤が胎児に悪影響を及ぼすことです。
表1 胎児毒性の例

1.胎児発育の障害
アルコールで起こる胎児発育の障害


2. 胎児臓器の機能障害
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)アンジオテンシン受容体拮抗薬(Angiotensin Ⅱ Receptor Blocker:ARB)アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬による胎児腎機能低下 ⇒ 羊水量の減少 ⇒ 胎児変形・拘縮や胎児死亡
NSAIDsによる動脈管収縮や新生児遷延性肺高血圧症
抗甲状腺薬による甲状腺機能低下、甲状腺腫
アミノグリコシド系抗生物質による第Ⅷ脳神経障害


3.子宮収縮の異常/流・早産/予定日超過/分娩遷延
NSAIDsによる予定日超過、分娩遷延
バゾプレシンによる子宮収縮
ミソプロストールによる強い子宮収縮とそれによる流・早産や胎児器官の破壊


4.新生児期への残留による障害
・体内に残留した抗生物質クロラムフェニコールを新生児が処理できずに起こる。頻度は稀だが重く、時には死に至る病態:グレイ症候群
・妊娠中長期にわたり曝露されていた向精神薬などの曝露が、出産で中断するために起こる新生児の脱力、振戦、痙攣発作など:新生児薬物離脱症候群


5.出生後の児の知的障害あるいは認知機能障害などへの影響
・アルコールによる胎児性アルコール症候群

(各種論文に基づき監修者作表)