監修 国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター

臨床研究開発部長/ACC治療科長 照屋 勝治 先生*

*資材ご監修時のお肩書で掲載させていただいております。

PCPの発症機序

PCP(Pneumocystis pneumonia:ニューモシスチス肺炎)は、HIV患者をはじめ細胞性免疫不全者でみられる肺炎であり、病原体は真菌の一種であるPneumocystis jirovecii(以下、P. jirovecii)です。かつては、PCPの発症機序として、小児における抗P. jirovecii抗体の保有率の高さ1)から、小児期にP. jiroveciiに感染したのちに潜伏感染状態となっており、宿主が細胞性免疫不全状態になると再活性化して発症すると考えられていました。

しかし近年、同一施設内におけるクラスター発生が報告されるようになりました。PCPのクラスターに関するシステマティックレビューによると、腎移植など固形臓器移植患者を中心とするアウトブレイク解析から、これらのアウトブレイクの多くが同一遺伝子のP. jiroveciiによるものであったと報告されています2)。それを支持するように、PCP患者の周囲の空気中からP. jiroveciiのDNAが検出されたとする報告もあります3)。以上より現在では、免疫不全状態下において本菌に再感染することで発症するという考え方が有力となっています4)

PCP発症のリスク因子

HIV感染者では、CD4数が低い場合(CD4数<200/μL)にPCPを発症しやすいことが知られています5)

HIV感染以外のリスク因子となる基礎疾患はさまざまですが、血液系悪性腫瘍、固形がん、造血幹細胞移植、自己免疫疾患などがあげられます。その多くは疾患に対する治療による免疫能の抑制が関与しています6)。なかでも、非HIV患者においてPCPの発症に関連が最も高いとされるのはステロイド薬であり、長期および高用量のステロイド薬使用はもちろん、断続的ステロイド薬投与もPCPの発症の重要なリスク要因となり得ることが示唆されています7)。そのほか、抗がん薬や免疫抑制薬、生物学的製剤の使用もPCP発症のリスク要因になりえます。

注目すべき点として、近年、リツキシマブなどの抗CD20抗体がPCPの発症リスクを高める可能性が指摘されています8)。これにより、細胞性免疫のみならず、液性免疫の主体となるB細胞もPCPの感染防御に重要な役割を果たしていることが示唆されます。

HIV患者ではCD4数が低い場合にST合剤を用いた一次予防の適応がありますが、非HIV患者にはCD4数のようなPCP発症リスクを評価する客観的指標がありません。ただし、細胞性免疫不全状態にある非HIV患者の予後は次に述べるようにHIV患者に比べ不良であるため、原疾患や治療内容による発症リスクを評価したうえで、一次予防の適応を積極的に判断することが必要ではないかと考えます9)10)

例えば、発熱性好中球減少症診療ガイドライン(改訂第3版)では、がん薬物療法を受けている患者でPCPに対する予防を検討すべき場合として、同種造血幹細胞移植に対し「1:強く推奨する(エビデンスレベルA:効果の推定値に強い確信がある)」、急性リンパ性白血病に対し「1:強く推奨する(エビデンスレベルB:効果の推定値に中程度の確信がある)」、成人T細胞性白血病に対し「1:強く推奨する(エビデンスレベルC:効果の推定値に対する確信は限定的である)」と強く推奨し、リツキシマブ併用薬物療法を受ける患者に対し「2:弱く推奨する(提案する)(エビデンスレベルB:効果の推定値に中程度の確信がある)」としています10)

HIV-PCPと非HIV-PCPの病態の違い

HIV患者のPCPと非HIV患者のPCPは臨床像、予後において大きく異なります。HIV-PCPでは、発症から診断までの平均期間が長く、進行は緩徐であり重症度も低いのに対し、非HIV-PCPでは病状の進行がより急速で、呼吸機能障害もより重篤です。重症度の違いを反映し、死亡率はHIV-PCPが10~20%に対し、非HIV-PCPでは30~60%と報告されています11)

P. jiroveciiという真菌それ自身の病原性はごく弱く、P. jiroveciiにより惹起された宿主の免疫反応(炎症)がPCPの病態形成の主役であると考えられています12)。つまり、重症度は免疫応答の強さによって規定されます。このことが、HIV-PCPと非HIV-PCPの病態の違いに影響していると考えられます。

HIV患者のPCPでは細胞性免疫の機能が損なわれているため、菌体を排除する能力が低下しています。結果、炎症反応が乏しく、肺内に多量のP. jirovecii菌塊が存在します。このことを反映して、画像所見としては影が淡く、非HIV-PCPでは頻度の少ない嚢胞性病変を呈することもあります13)14)

一方、非HIV-PCPは、炎症反応が強く、菌量は少なく、呼吸器検体からの検出がしばしば困難です。つまり、非HIV-PCPでは、原疾患の治療による一過性の免疫抑制状態が肺内で菌体増殖を引き起こすものの、その後の免疫能の回復によって過剰な免疫応答による菌体排除が起こるのだと考えられます。例えば非HIV-PCPでは、ステロイド薬の減量あるいは免疫抑制療法の中止によって発症することが知られています15)16)が、この病態は免疫再構築症候群(IRIS)という概念で説明可能と考えられます。

IRISは、免疫抑制状態から免疫機能が回復した際に生じる反応性の増加により、新たな症状や疾患が現れることが特徴です。免疫応答増強による強い炎症反応の結果、隠れていた日和見疾患が顕在化したり(unmasking IRIS)、治療経過良好だった日和見疾患が増悪(paradoxical)したりする現象です17)。もともとHIV感染者において、抗レトロウイルス療法(ART)を開始した後に見られる現象に対して名付けられましたが、非HIV-PCPの病態もunmasking IRISによって説明することができると思われます。

非HIV-PCPをどう疑う?

 

細胞性免疫不全をもつ非HIV患者では、HIV患者におけるCD4数のようなPCP発症リスクを評価する客観的指標が存在しない18)。非HIV-PCPの予後はHIV-PCPよりもはるかに不良であるため、原疾患や治療内容によるPCP発症リスクを個別に認識しておくことが重要である。非HIV-PCPで進行性の呼吸苦があり、胸部X線上に両側性びまん性陰影が認められればPCP発症の可能性を疑うと良い14)。血液検査でLD(LDH)上昇とβ-Dグルカン上昇がみられればPCPの可能性が高くなる19)

PCPとCOVID-19肺炎の鑑別

COVID-19はいまだ終息がみられず、新たな変異株の出現に伴う流行の波を繰り返しています。COVID-19肺炎とPCPを画像所見のみで正確に鑑別することは必ずしも容易ではありません。SARS-CoV-2の流行株の主流がデルタ株からオミクロン株に置き換わって以降、ウイルスの病原性はやや弱まり、ECMOの施行患者数も減少20)するなどCOVID-19重症肺炎は劇的に減少しました。オミクロン株流行下では肺炎が発症した場合、SARS-CoV-2だけでなく他の原因についての鑑別を考慮するケースが想定されます。このことにより、両者の鑑別はより複雑さを増していると考えられます。

例えば、PCRでSARS-CoV-2が検出され、肺炎が見られるとしても、必ずしもCOVID-19肺炎とは限りません。SARS-CoV-2はコロナイゼーションを起こしているだけで、肺炎の原因はほかの病原微生物、例えばP. jiroveciiである可能性が否定できません。これは逆の場合もあり、P. jiroveciiがコロナイゼーションで、肺炎の原因がSARS-CoV-2のこともあり、さらには両者ともに肺炎を起こしていることもありえます。つまり、病原体の検出のみで肺炎の原因を診断することが難しくなっている、ということがいえます。

外来患者の場合は、服薬アドヒアランスが十分保たれていることが前提ではありますが、HIV患者、非HIV患者のいずれにおいてもST合剤による一次予防が実施されている場合にはPCP発症の可能性は低くなります10)21)22)

上記のように免疫不全者の肺炎の鑑別が難しくなっている状況を考えるとST合剤などの予防薬を用いて、PCPの可能性を極力排除することが臨床上きわめて重要になってきていると考えています。

COVID-19重症例におけるPCP同時感染

さらには、COVID-19重症例においてPCPとの同時感染が報告されており23)、今後引き続き注意すべき病態と考えられます。

COVID-19の重症例は一過性かつ可逆性にCD4数減少を来すことが知られています6)24)。また、重症例ではステロイド薬による免疫抑制療法が行われるため、その期間にP. jiroveciiを保菌するリスクを高め、PCPの発症に至る可能性は否定できません。

実際、P. jiroveciiとSARS-CoV-2の同時感染は、欧州、北米、日本を含むアジアからも報告されています6)(図)。

われわれの施設においては、2022年10月時点で4例の同時発症例を経験しています。典型的にはCOVID-19診断の数週後、進行性の多葉性肺炎として発症し、予後不良でした。

また、海外の単一施設の後方視的研究では、非HIV患者におけるPCP発症について検討し、COVID-19時代のPCPの発症率は、COVID-19以前の時代よりも有意に高かった(1,000人年あたり37.0対13.1、p<0.001)ことを報告しています25)。興味深いのはPCP発症者の臨床的特徴であり、COVID-19以前の時代に比べCOVID-19時代の年齢(中央値)は10歳高かったことが報告されています(p=0.002)25)

一般的に、加齢に伴い細胞性免疫が低下することを踏まえても、高齢者ではCOVID-19発症により免疫能が低下し、PCP発症の引き金になる可能性が推測されます。

HIV感染者のCOVID-19罹患によるCD4減少

 

われわれの施設において、軽症COVID-19と診断されたHIV患者が自宅療養となり、熱が下がらず肺炎発症が疑われたが、精査にて続発性に結核を発症したと考えられる症例を経験した。HIV患者ではCD4数が200/μLを下回るとPCPなどの日和見感染症を発症しやすくなることが知られているが、本患者はCOVID-19発症を契機にCD4数が減少したことで結核発症に至った可能性が考えられる。CD4数が十分回復していないHIV患者では、CD4数の減少に伴い日和見感染症を発症する可能性が高まるため、特に注意が必要と考えられる。

COVID-19とPCPの同時感染を疑うポイント

 

免疫不全者の肺炎では常に同時感染の可能性を疑い、特に画像所見が非典型的である場合には注意が必要です(症例)。

また、ST合剤の予防内服中であっても患者の服薬アドヒアランスが不良の可能性を念頭に丁寧な問診をとることが重要と考えられます。

References

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3) Firas C, et al. Clin Infect Dis. 2010; 51: 259-65.

4) 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き作成委員会 編. 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き. 日本呼吸器学会, 2014, p.32.

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7) Calero-Bernal ML, et al. Can Respir J. 2016; 2016: 2464791.

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10) 日本臨床腫瘍学会 編. 発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン 改訂第3版. 南江堂,2024

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13) Hardak E, et al. Lung. 2010; 188: 159-63.

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15) Arakawa N, et al. Intern Med. 2021; 60: 3143-7.

16) Fujita J. Respir Investig. 2020; 58: 36-44.

17) 免疫再構築症候群 診療のポイント ver.6. 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) ART早期化と長期化に伴う日和見感染症への対処に関する研究班, 2023 

18) Huang L, et al. BMC Pulm Med. 2023; 23: 72.

19) Sun R, et al. Sci Rep. 2021; 11: 9226.

20) NPO法人日本ECMOnet. COVID-19重症患者状況の集計

https://crisis.ecmonet.jp/ 

21) Stern A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014; 2014: CD005590.

22) Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Adults and Adolescents. Panel on Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Adults and Adolescents With HIV. Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Adults and Adolescents With HIV. National Institutes of Health, HIV Medicine Association, and Infectious Diseases Society of America. Available at: https://clinicalinfo.hiv.gov/en/guidelines/adult-and-adolescent-opportunistic-infection. Accessed March 6, 2025.

23) Gioia F, et al. J Fungi (Basel). 2022; 8: 585. 

24) Diao B, et al. Front Immunol. 2020; 11: 827. 

25) Kang JS. Life (Basel). 2023; 13: 1335.